ブログを読んで下さった方々から、お問い合わせがいくつもあったので、Highbodia施設オーナーが取り組んでいる社会事業の一つ「青空理科実験教室」について、コロナ以前のその様子や実施に至った背景などをご紹介します。(上のイラストは「カンボジア理科実験協会」のタイトルグラフィックです)
(以下本人による経緯説明)
ある時、カンボジア人のスタッフとカンボジアの学校教育に関して話をしていた際、彼が理科の授業で一度も実験を経験していないと聞き、びっくりする一方、教室も先生も足りない現状ではさもありなんと納得したものでした。彼は自宅で英語の私塾を開いていたので、私に彼の生徒たちに実験をやって見せてくれないかともちかけてきました。そこで自分が持っていた顕微鏡や実験機材を日本から持参して、カンボジアの子どもたちに簡単な理科の実験をして見せたところ。日本の子どもたちではありえないほどの反応を返してくれたのです。私は教師を辞めて以来、久しぶりに子どもたちの驚く顔と笑顔を見て、理科の教師としての血が騒ぐのを感じました。スタッフも子供たちの反応を見て、地元の学校でも実施してほしいとカンポット州政府と交渉して、理科実験の出前授業の許可を取ってきてくれました。今はカンボジアの南部にあるカンポット州で、地元の小・中学生を対象に不定期に実験教室を行っています。
そこで、現地での青空理科実験教室のお手伝いボランティアを募集しています。一緒に学校を回って、実験の準備や配布の手伝い、安全に正しく実験出来る様な見守り、そして子供たちの感動を共有して頂ければと思います。実験内容は皆さんが小学校で経験したような内容ですので、気軽に指導していただけます。実験のアイデアをお持ちの方は、実験内容の企画もどうぞご参加ください。アシスタントとしてお手伝いしたい方も大歓迎。英語がお得意な方は通訳としても活躍の場があります。
理科の実験ができない!カンボジアの学校事情
アジアの中でも、急速な発展を見せているカンボジアですが、日本のような設備が整っている学校はまだまだ少なく、机と椅子と黒板しかない学校がほとんどです。そのため、道具を使わない座学の教育がメインとなっています。カンボジアの平均年齢は25歳で出生数も多いため、子どもの数に対して学校と教師が不足しており、学校は午前と午後の入れ替え制となっており、教育時間が少ないというのが現状です。もちろん理科の授業も実施されておりますが、実験道具などはないので、教科書を見て学ぶだけの授業です。子どもの頃の実体験により、ライフプランが変わるとよく言われますが、カンボジアの子どもたちは理科の実験を体験することなく、大人になっていくのです。
<現地政府の協力体制>そんな中、カンボジア政府は経済政策として「工業」を発展させようと動いています。そのため、初等教育における理科と数学の教育にこれから力を入れていく方針を打ち出しています。今回の移動実験教室に関しても、理科の実験教室を実施しているということをスタッフから聞いたカンボジアの行政から「ぜひ、地元の他の学校でもやってほしい」と声がかかり、学校との調整も行政が行ってくれることになりました。
これまでの実験教室の取り組み
カンボジアの学校では前述の通り午前と午後で生徒が入れ替わるため、私の実験教室は授業がない生徒を対象に希望者を集めて、校庭の片隅で実施しています。現地の先生方も協力的で、事前案内は勿論のこと、引率して来てくれることもあります。時間は1回あたり約90分、参加人数は多い時で30名、少ない時は5〜6名でも行います。不定期で開催しており、希望する子どもたちの学業に支障は与えず、参加したいときに参加してもらっています。これまでは①スライム作りや②顕微鏡での水草やプランクトン観察、③レンズの実験、④砂鉄と磁石を使った実験、⑤携帯カイロの発熱実験、⑥空気砲等など、日本の子どもたちが学校で習ってきたような簡単で楽しい実験をいくつも行ってきました。子どもたちはみんな、理科の実験を見るのが初めてなのでビックリして、楽しいおもちゃをもらったような反応をしてくれます。そして不思議な現象と、それを裏付ける理由があることに対して興味を抱いてくれています。
私はこの活動を通じて、教育環境が未熟なカンボジアで、地方に埋もれている才能を発掘・啓発し、カンボジアの将来を担える若者を育てることにより、カンボジアの発展に寄与できると信じています。そしてなにより、実際にやってみて自分がとにかく楽しかったので、この楽しさを多くの方にも体験していただきたいと強く思っています。
コロナ蔓延の時期はカンボジアでも休校が相次いでいましたが、今では普段の生活に戻りつつあり、マスクをしている人はほとんど見かけません。換気も十分な青空教室で、薬漬けでない自然の微生物に鍛えられた免疫力を持つ子供たちに、楽しく学ぶ機会を一緒に創造しませんか。